(1面)
2001/01/24[第1号] Japan Dietetics Institute
【糖尿病です】

糖尿病というのは「コントロール」がカギだといわれています。
「エネルギー(摂取カロリー)のコントロール」「血糖値をうまくコントロールする」ことが第一原則です。
それがうまく実行されれば問題はないのですが、なかなかそ うはいかないのが「悩み」ですよね。


今回ご紹介する「Aさん」はBMIでの標準体重は60kgでありながら、20年近く体重が「80kg」をきったことがありません。数年前 まででは「100kg」に達するのではないかとまことしやかに噂されており、本人も「絶対痩せない体」だと思っていました。それが突然の「糖尿病」宣告。
「痩せない体」を「痩せる体」に変えていかなくては「病気」 はコントロールできません。 「意思の弱いAさん」が「意思の強いAさん」にかわっていく 様子をご紹介します。

【プロフィール】
男性 36歳
身長165cm 体重86.5kg
職業 : 食品の仕入れ(バイヤー)
 
知り合いのAさんがある日突然泣きそうな声で電話をかけてきました。
「保険に入りなおそうと思って病院に健康診断に行ったら「今まで倒れなかったのが不思議なくらいに血糖値が高いですよ。」と言われたらしいのです。病院ではまず「眼科」で「眼底検査」をうけるように指示されました。こちらの結果は「異常なし」。
再度、同じ医師の診察を受けた彼は「糖尿病手帳」を渡され、「できれば1ヶ月ほど入院した方がよいでしょう。」と言われたそうです。

職場でけっこう重要なポジションにいる彼はまず上司にこのことを告げ、上司に「もし入院となったら、その間にどうしてもやらなければならない仕事を書き出しておくように。」と言われました。 仕事柄食べる機会も多く、常に食べ物が周囲にあるという環境で仕事をしてきたAさん。

彼の生活を多少なり知る者としては、「健康診断を受けた方がいいと思いますよ。」とか 「どこか体で悪いところはないですか?」と何度となく言っていたのでした。が、返って くる返事は「病院どころか薬も飲まん。どっこも悪いとこはない。」という言葉ばかり。今まで「健康体」で通してきた彼にとっては医師から告げられた言葉は正に「青天の霹靂」 のようでした。で、悩んだ挙句に「栄養士である私」に相談してきたのです。

「どうしたらいい?」と泣きそうな声で聞いてくるAさん。電話の向こうの姿が想像できて 本人には申し訳ないのですが笑ってしまいました。私としては常日頃からアドバイス していたのに「相変わらずのだったAさん」に「やっぱりね。私の言ったこと聞かなかった んだから・・・。」と冷たくひとこと。そして「入院したみたら・・・・」と言ってみる。Aさん電話口で「えっ?」

「入院したくなかったら私の言うとおりにしますか?つらいですよ。でも入院はしなくてよくな ると思いますよ。」という私の言葉に対してAさんの返事は
「何でもします・・・言う事聞きます・・・お願いします。」

ここからAさんの「糖尿病」との戦いがはじまったのです。ちなみに当然のことながら「新しい保険」 に入ることはできなかったようです。 まず、私は最初の検査結果での「血糖値」が「食後/472」とあまりに高かったので「別の病院」で再検査してもらうように勧めました。
 
最初の病院での検査結果
血糖値 472(食後)
尿糖 ++++
ケトン体
たんぱく
HbA1c 10.5
体重 86.5kg
 
それと、この検査より少し前に「職場の健康診断」を受けており、「診断結果」がまだ出てないというのでその結果もあわせて問い合わせてみることを勧めました。すると、健康診断を受けた病院での結果も「糖尿病の疑いがある」ことがわかり、 2日後に会社の健康診断を受けた病院でもう一度検査ということになったのです。

突然「糖尿病」と言われたAさん。最初の診断から2日後に自分の職場 と関連がある病院で、もう1度診察してもらうことになりました。
 
このときの検査結果
血糖値 221(食前)
尿糖
ケトン体  
たんぱく ±
HbA1c  
体重 84.2kg
 
体重は心労からか2日前に比べて「2.4kg」減でした。
「血糖値」も最初の検査ほど高くはなかったのですが、Aさんは やはり「糖尿病」との診察結果を病院からくだされたのです。「食事療法による減量がまず第一」という事で、しばらくの間 「薬」などは使用しないという治療方針に決まりました。

この結果を聞いた私は、まずAさんの「身長・体重」から 「標準体重」を算出し、「1日の必要摂取量」を1600kcal(20単位) がベストであると助言しました。ちなみに検査を受けた病院でも「摂取カロリー」を「1600Kcal」と指示 されたようです。
 
私がAさんに出した食生活上の注意点はこのようなものです。
■ご飯は165gが基本
■「ゆっくり」食べる
■ジュース・アイス・甘いものは絶対食べない
 (仕事しながら「飴」などを絶対に口にいれない)
■お酒も飲まない(幸いにしてAさんは飲めない方でした)
■外食の際は「選んで食べる・全部食べない」
■なるべく歩く(体を動かす)
■仕事でも食べることを「控える」 ← これが最大の難関
 
普段の生活を多少なりとも知っているだけに、私が注意した内容はAさんの今までの食生活からすると衝撃的なものであったと思います。 Aさんは「ジュース」などを日頃からよく飲んでおり、真夏どころか秋口になってもよく「汗」をかくような人でした。これは「糖尿病の典型的な症状」です。

そこで、私がAさんにまず提案したことはを仕事の際に「水筒」持って いくことでした。 Aさんは手頃な「水筒」を買い求め、毎日会社に持っていく ようになりました。 これは余談ですが、Aさんが「水筒」、「お弁当」を会社に持っていく ようになってから、なぜか同僚に「水筒」、「お弁当」を持ってくる人が増えたそうです。
 
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