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2002/02/26[第23号] Japan Dietetics Institute
【未来のライフスタイル】
 
 
「デパ地下」とか「デパ地下戦争」という言葉をご存知ですか?

「デパ地下」とは「デパートの地下」という意味で、食料品売り場のことを指しています。 最近では各百貨店が独自の企画を打ち立てたり、思考を凝らした販売コーナーを設けて集客力をアップしようとしています。

そこには最近の家庭での食生活のあり方がまさに反映されているのです。

かわりゆく食生活を追いながら、今回は「HMR」(Home Meal Replaecment)=「家庭の食事にかわる もの」についてお話してみたいと思います。
 
高度経済成長の到来とともに日本人の食生活も大きく変わり、多様化・個性化の時代となってい ます。
食糧不足から「飽食」へと移り、最近では「志向 の選択」へと変わりつつあります。「志向の選択」 とは「健康志向」「グルメ志向」「安全志向」「簡便志向」というライフスタイルを反映させた食生活のあり方です。
以前「中食(なかしょく)」について書いたことがありますが、最近では働く女性が増え、簡単な調理や盛り付けで済むものを購入する客層にターゲットを絞ったスーパーや百貨店が多く見られるようになりました。
 
 
皆さんが普段足をよく運ぶスーパーの食料品売り場の入り口そばには何が売られていますか?

従来のスーパーでは野菜、果物などの青果物が売られていることが多かったと思います。その理由は彩りや商品の新鮮さをアピールするとともに、消費者がよく購入するものを店の奥にもっていき、足を奥まで運ばせようという「狙い」があったのです。
言い換えると、”長時間店にいてたくさん買ってもらおう”という考え方での売り場配置だったのです。
最近では働く女性が短時間で食料品を購入できるように、入り口近くに「惣菜売り場」を配置し、最初に”今晩のおかず”を決めてからそれに不足したものを購入してもらおうという売り場配置になりつつあります。”短時間で来店頻度を高める”という手法です。
 
 
近頃お店が「提案」という新しい手法で消費者の心をつかもうとしています。
具体的には、「料理の提案」「盛り付けの提案」などで、そういった食卓 の演出により、消費者の購買意欲を高めようとするものです。
例えば、「料理の提案」などは、お店の「売りたい商品」をどう料理に使えばよいかの具体的なレシピの配布や、実際の料理を売り場に置くことにより視覚的に訴えるものです。
最近の女性は食事にもデザイン性を求めますから、テーブルを彩る生活雑貨などでアレンジすると、雑貨類の販売も相乗効果で狙えるというのです。
 
 

従来のデパ地下の銘菓売り場はどちらかといえば、お土産などの贈答用として購入する客層向けであったような気がします。最近では自分用に購入したいという人向けに、バラ売りのコーナーを設けたデパートも多くなりました。少しずつ買っていろいろな味を楽しみたいというわがままな気持ちをうまく利用しているのです。

また、和風料理の基本の「味噌」や「お米」。
季節の食材や料理によっての使い方やブレンドを提案し、少ない量を購入してもらうことで、何度も足を運んでも
らおうという気持ちがあるのです。お米にしても、相性の良い「お水」などを一緒に紹介すると、抱き合わせて販売できるという効果もあります。

 
最近は「味見をしない主婦」が増えていると聞きます。ちょっと炒めて後は”○○の素”などを加えると、失敗もなく毎回均一な味の料理ができるので、そういうものを利用する人が増えてきているからでしょう。

帰宅時間もバラバラで好みも違い、家族の人数も少ないとくれば、”お惣菜”や”○○の素”の需要はこれからますます増えてくるのではないでしょうか。カット野菜の需要も毎年大変な伸びをみせているとか。

外国の”デリ”のようにお洒落で開放的なお店はこれからますます利用が高まると予想されます。

「テーマパークはいかに客の心をつかみ、リピーターを増やすかにかかっている」という話題がテレビで取りあげられていましたが、デパートやスーパーなども同じです。お客のニーズをいかに読み取るかが集客力のアップにつながるようです。

当ホームページの柱となっている献立も、近い将来は「材料名」に”○○の素”などと表示しなくてはいけない時代がやってくるのでしょうか?
私が子供の頃、21世紀の食事は「経口栄養剤」みたいなものでとるようなイメージがありましたが、どうやらそういう時代はまだまだ先のようです。

お惣菜などのHMRを上手に利用しながら、「おふくろの味」も守っていきたいものです。
 
 
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