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2002/01/28[第22号] Japan Dietetics Institute
【もう1つの糖尿病】
 

だいぶ遅くなりましたが、「j-diet News」からの新年のご挨拶をまず。
年が明け、「日本治療食研究所」も本格的に始動してから丸1年を無事迎えることができました。この1年、雑誌等にもご紹介いただき当初の予定より も多くの方に入会していただいきました。このサイトを病気やダイエットをはじめとする食生活についての情報発信源として、より分かりやすくお届けできたらと思いますので今年もどうぞよろしくお願いします。

今年最初の「J-DIET NEWS」は知識と理解を得たい「もう1つの糖尿病」についてです。

 
第20号の「変わる糖尿病治療」では、糖尿病といわれた患者の方のうち全体の99%の方がU型の糖尿病であると言いました。今回は残りの1%の方についての状況などをお話してみたいと思います。
U型の方はインスリンがでているのにも関わらずそれが正常に機能していないタイプの糖尿病であり、食生活の習慣と深く結びついているということは皆さんよくご存知ですね。
ではT型の患者さんは?と言いますと、発症率が10万人に1人か2人であり、その多くは18歳以下の若者や子供に多いと言われています。
T型糖尿病
IDDM、小児糖尿病、インスリン依存型糖尿病、インスリン 欠損症などの呼び方もあります。
 
 

発症の原因はウイルス感染で、膵臓のβ-細胞が壊されてしまい、インスリンがほとんどでなくなってしまうのです。食生活が悪かっ たわけでも、親が悪いわけでも、ましてや本人が悪いわけではありません。
ですから「糖尿病」というイメージで見られることは、本人や周囲の人間にとってはつらいことなのです。

T型と診断されると一生闘病生活がついてまわります。 インスリンがでないので、注射や投薬を行います。その結果、急激 に血糖値が下がってしまい、低血糖の症状を起こしてしまうことがありますし、逆にエネルギーの摂りすぎで、高血糖を起こしてしまうこともあります。
まだよちよち歩きの子供に自分の状態が分かるわけがありません。なので、常に周りの人間がその子の様子に気を配らないといけません。また、幼い子供に徐々に自分の体のこと病気について理解させていかなければなりません。大人でも難しい自己管理を小さい頃からしていかなくてはならないのです。

 
 
昔は糖尿病は“遺伝”すると言われていたことがありますがそれは誤解であり、今はどちらかというとU型の糖尿病の方の方が近親者同じタイプの糖尿病を持つ人が多いというデータ結果もあります。
 
 

厚生労働省が認定した18歳未満のT型糖尿病の患者数は全国で約6千人。これから進学、就職の人生の大きな転機を迎えなければなりません。しかし、社会が病気についての正しい知識と理解をしていなければ、それぞれの節目ごとに、彼らは差別や偏見の壁にぶつかることになります。

学校生活ではまず学校関係者が。

大きくなれば自分で状況を判断できるでしょうが小さい間、特に保育園、幼稚園、小学校では自分が他のお友達と違うことをするには勇気がいります。小さい時、授業中に「トイレに行きたい」と言えなかったことってあり ませんか?周りの目が気になりましたよね。
低血糖で砂糖や飴を口にいれなければならない時や、激しい運動前 に捕食をしなければならない時、周りに好奇の目で見られると、やはり本人にとってみれはつらいものです。

ましてやインスリンの注射となると。
ほとんどの場合、学校との話合いで保健室や別の場所を確保してもらえているようですが、中には“校内で注射を打つことへの疑問”をもつ教師もいるということですから、まだまだ十分な理解は得られていないのが現状です。

糖尿病はT型・U型ともに、きちんとした血糖値コントロールができれば、普通に生活できる病気です。
指を切れば“ばんそうこう”を貼り、風邪で風邪薬を病院でもらい、それを昼食後に飲む必要があれば学校で飲みますよね。インスリン注射も同じではないでしょうか。

万が一の注射の事故について危惧であれば、子供たちはきちんとトレーニングされていますし、1日に何度も注射をしています。注射での事故よりも、きちんと注射や捕食ができない場合に起き得る血糖障害での事故の方がより心配なのです。

繰り返しますが、環境さえきちんと整えられていれば、学校生活が普通に送れるのです。

 
病気を持つ子供達は前向きです。病気について劣等感や人生に大きな損失だと感じるよりも、むしろ病気をコントロールして、この病気がプラスに転じるように積極的に生きていこうという気持ちでいる子供の方 がはるかに多いそうです。
こういうビジョンをもつ子供たちが、偏見なく受け入れられるような社会になるよう正しい知識や理解の輪が広がればと思います。
 
 
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