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2001/11/26[第20号] Japan Dietetics Institute
【変わる糖尿病治療】
 

日本治療食研究所でも折にふれて「糖尿病」について話題にしてきました。
日本人の人口のうち約690万人が「糖尿病患者」であると言われ、同じ位の人数がその「予備軍」であるとされています。 「糖尿病」は生活習慣病の代表のように言われ、 日本中でライフスタイルの改善が叫ばれています。 しかし、残念ながら患者の数は増加の一方であり、糖尿病治療も大きく変化をしています。

今回の「J-DIETニュース」は「かわる糖尿病治療」についてお届けします。

 
糖尿病の型には2つの型があるということをもう皆さんもご存知ですよね。
その中で日本人に多いのは2型の患者さんで、全体の約99%と言われています。つまり膵臓から「インスリン」は分泌されていてもその働きが十分でない人が日本人には多いのです。

しかし、20歳代〜30歳代と50歳代〜60歳代とのインスリンの分泌の量を比較してみると、若い人の方が量的には多いのですが、働きは劣っているということが調査結果で明らかにされました。若い世代に「予備軍」が多いことを考慮すると、食事の欧米化や運動不足がこういったおかしな現象を引き起こしているのかもしれません。

糖尿病は運動や食事療法で血糖値がコントロールされていれば、おそろしい病気ではありません。普通の人とかわりない生活を送ることができるのです。ただ問題なのは、そうでない場合(合併症がでたり、血糖調節ができなくなったり…)です。
そうなると今までの治療法では、経口血糖降下薬を服用したり、インスリン注射などを受けなくてはなりませんでした。 しかし、欧米ではこういった従来の治療に加え、より患者側の負担を軽減するべく臨床試験が行なわれ実用化に向けて動きだしています。
 
最近、国内のあるメーカーが「ShimaJET(シマジェット)」という針のない注射器を開発しました。
これは患者さん自身で行なう「インスリン注射」の際に、針のかわりにプラスティック製ノズルでインスリンを皮膚に高圧で注入噴射できるといった画期的なものです。

現在、糖尿病患者さんのうちの約1割がインスリン注射を受けていると言われています。この方々の肉体的な負担が少しでも軽減されるのであれば、大変すばらしいことだと思います。
さらに、「吸入式のインスリン」というのも海外で臨床試験が行なわれており、遠くない未来にはこのようなものが使われるのでしょう。
ただ、今のところ肺の大きさや喫煙の有無によって、体内への吸収量が個人で大きく異なるため、その解決策がこれからの課題のようです。
 
最後に究極の治療の話題をしましょう。
糖尿病が悪化すると、膵臓が本当に機能しなくなります。こうなってしまった患者さんへの治療として”膵臓移植”やインスリンを分泌する”β−細胞のみの移植”が実施されています。移植後の患者さんはというと、ほとんどの方が良好な血糖値を維持しており、インスリンも必要ないということです。
 

良い治療法が確立されれば患者側の負担も軽減されます。
しかし、一番よいのは「糖尿病にならないこと」なのです。 日本人はもともと「農耕民族」であり、欧米人に比べ少ない食事であっても体の調子を維持できるような遺伝子(=倹約遺伝子)を多く持っています。
ですから、欧米人のような食生活を続けていると途端に糖尿病になるリスクが高まります。 病気に対する知識、ライフスタイルの見直しを常に心がけ、健康を維持できるようありたいものです。

 
 
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