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2001/09/04[第15号] Japan Dietetics Institute
【スローフード】
このフレーズ、皆さん何だと思いますか?これは実は歌詞なんです。
これは今から50年近く昔に、ある地方で「食生活改善推進」の為に作られた歌の歌詞なのです。
 
戦後、「もっと欧米人なみのがっしりとした体型」目標に掲げ、「まずは食生活」ということで「まるまる太ってすこやかに」なんて歌詞が使われたのでしょう。
けれども今の日本人は「まるまる太れば不健康」ということにようやく気づきはじめてきて原点にかえろうとしていますね。

食べ物で”健康”を作るという基本は変わらないまでも、食べ物からも健康を守らなければならなくなっています。
最近は第11回でとりあげた「新しい食生活指針」などとともに、もっとわかりやすいレベルでの「食生活」への働きかけが行われています。その1つに「スローフード」というのがあります。 今回の「j-diet ニュース」ではこの「スローフード」をとりあげてみたいと思います。
 
「スローフード」運動はイタリアの小さな町ではじまった運動なのです。
その町に「ファーストフード」のお店が誕生することがきっかけで起こったというのですが、何も「ファーストフード」のお店に攻撃するためではないのです。

その運動のきっかけとなった人々の思いとは次のようなことなのです。
消えてゆく恐れのある伝統的な食材や料理、質のよい食品、ワイン(酒)を守る
質のよい素材を提供する小生産者を守る
子供たちを含め、消費者に味の教育を進める
 

 
イタリアの食事というのは「パスタ」や「ピザ」からも伺えるように、オイルやチーズを使って「こってりしたもの」が多いように思います。
けれどもイタリア人にはあまり「肥満」の人いないというのです。
その理由は・・・
オリーブオイルですから、他のオイルよりも健康によいことはもちろんのこと「ゆっくりと食事をすること」が一番の要因ではないかと思います。

食卓を囲みわいわと会話を楽しみながら食事をとることで心身ともに栄養がとれるといった感じでしょうか?

食事を楽しみながらとるというイタリアの風土にあった食生活が失われないためにこのような運動が起ったとも考えられますね。
 

日本もじわじわと「スローフード運動」が広まりつつあります。
それぞれの地方の特色をいかした「素材」「郷土料理」「地酒」などが日本にはたくさんあります。こういうものが失われない為にはこのような運動がますます広がってほしいものです。

一人で食べる食事(個食・孤食)は好きなものばかりに偏りがちになりますし、急いで食べるのであまり噛まずに流し込む傾向にあるといわれています。噛むということは子供の顎の発達のことだけではなく、唾液をだすことで環境ホルモンへの防御の働きもあるといわれているのです。

ファーストフードとスローフードの上手な使いわけが良い食生活を作っていくように思います。

 
 
最後に余談になりますが子供向けの絵本だと思っているものが案外と「大人に何かしら教えてくれるもの」だったりすることがよくあります。

あのサン・テグジュペリの「星の王子さま」では「大切なものは目にみえない」という言葉がすごく印象的で、ミヒャエル・エンデの「モモ」という本は時間に忙殺されていることの心の貧しさを気づかせてくれます。

時間に追われて「もっとはやく もっとはやく」とスピードがあることが何よりも良いことだと思いがちになる自分に、時々「はっ」とする時があります。

たまには皆さんのんびりと「スローフード」を楽しみませんか?
 
まだ「星の王子さま」「モモ」など読んだことのない方は是非一度読んでみてはいかがでしょう?
お茶でもゆっくりといただきながら。
 
 
 
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